知多市岡田は江戸時代の綿花栽培から始まり、「農閑稼ぎ」の木綿の機織やそれらを集め商売とした仲買人や買継問屋も複数現れ、知多地方の商業の中心地へと発展していきました。明治期に生産性の高い機械機織が導入され木綿工場が建ち並び、そこで働く女工さん達を顧客とした商店街が形成され、明治~大正~昭和初期と繁栄を遂げました。需要の変化で木綿産業は衰退しましたが、知多木綿に縁のあった建造物が数多く現存しています。平成25年度事業のひとつとして、岡田地区に於ける「県内の歴史的建造物が多く残る町並み調査」を地元で活動されている岡田町並保存会の方々に御協力頂き、築50年以上を過ぎた建造物、社寺、祠、石碑、土塀石垣等、旧跡等の現地外観調査及び聞取り調査(対象数636棟)と、併せて5物件の個別調査も行いました。

本調査から得られたこととは…

『町並みの特徴』
・丘陵地が多くそれぞれの地形条件に合わせて建造されており景観は変化に富んでいる。
・旧道や新道(大正に敷設)界隈は木綿産業に関わった旧家、庄屋、木綿工場施設、商店など密度高く、周辺丘陵地には比較的広い敷地を有する農家(民家)が数多く点在している。
・道が狭く大火に見舞われた経験が幾度があり火の神様で知られる「秋葉社祠」が点在する。(16箇所)また辻地蔵も大切にされている。

『岡田の町並みの考察』
   古くから在る旧道や大正期に敷設された新道界隈に岡田の繁栄を忍ばる旧家、庄屋、商店、木綿工場関連施設などの歴史的建造物群が形成する中心地の町並みは貴重な財産であることは岡田を訪れた誰もが思うところですが、その繁栄は江戸期から始まった木綿栽培や機織を兼業とした周辺丘陵地の農家が起源でした。中心地の早急な町並み保存も必要ですがこれら農家に見られる伝統的民家も含めた町並み全体を保存することが大切なことであると思われます。

(岡田地区調査担当 ヘリテージマネージャー:伊藤 津島 吉田 田中 本山)