武豊町の小迎・大足地区は愛知の海運と鉄道の玄関口として発展しました。各地の流通が盛んになり、灘酒に押されて衰退した酒蔵が味噌蔵へと移行し、江戸末期から変わらない製法を守る豆味噌・たまりの醸造蔵が今でも多く残る地域です。平成26年度の事業のひとつとして、「醸造蔵が残る町並み」を武豊町歴史民俗資料館の館長や地区長、醸造蔵所有者の方々にご協力を得ながら築50年以上を過ぎた建造物、社寺、祠、石碑、塀等、旧跡等の現地外観調査及び聞取り調査と、併せて2箇所の醸造蔵について個別調査を行いました。

「武豊町の歴史」
 武豊町は地理的には知多半島の中央を走る丘陵の東側の三河湾臨海部に位置しており、名古屋に近い天然の良港として全国に知られていました。明治19年(1887年)に海外からの鉄道部材を運ぶに適した港がある場所として武豊港駅(貨物駅)と武豊駅(旅客駅)?熱田駅をつなぐ愛知県で初めての鉄道、武豊線が開通し、海運と鉄道で愛知県中心部とをつなぐ産業の中枢となっていきました。

愛知県最初の鉄道 武豊線

「醸造蔵の町並みの特徴」
 小迎・大足地区には繁栄時50件もの味噌・たまり蔵がありましたが、戦争と食文化の変化により現在6件の蔵が現存しています。それぞれの蔵の外観上の特長は、日本瓦葺き切妻屋根、中2階程度の棟高の建物で、黒い下見板ささら子押えの外壁に白い漆喰で塗られた窓枠がアクセントとなっています。醸造元は数件の蔵を所有しており、共通して道路を挟んだ両側に蔵が建つのが配置上の特徴といえます。細く曲がった道に面して建つ醸造蔵が町並みを形成し味噌とたまりの香ばしい香りが満ちています。また地区内には津島神社などの小さな祠や札所案内の石標、レンガ煙突、のこぎり屋根の建物がいくつか点在しており、この地区ならではの特徴的な文化や歴史が醸造蔵の町並みを引き立てています。

道を挟んで建つ醸造蔵

「町並みの保存と活用の提案」
 小迎地区は国道247号線に面する蔵を活かして「醸造蔵のあるまち」の北玄関として、味噌・たまりの製法と歴史を伝える場として地域への開放を図ります。大足地区はまとまって現存するみそ蔵を中心に散策できる「みそ蔵の小径」で街の魅力をまちなみ探索することを通して活性化することを図ります。大足地区から小迎、長尾地区を、点から線へと街道とサインを整備することで、武豊町の歴史を知る、文化を学ぶ、伝統を食する、と魅力発見となる「歴史と醸造蔵がつなぐ散策路」 を提案したいと思います。

町並みの保存と活用の提案イメージ

(武豊町小迎・大足地区担当 ヘリテージマネージャー 市川・川口・木ノ下・後藤・林)